マスメディア掲載記事特集(平成18年8月4日)このページを印刷する - マスメディア掲載記事特集(平成18年8月4日)

アスベスト小体の計数調査 山陽病院がスタート

国立病院機構・山陽病院(上岡博院長)は、8月からアスベスト(石綿)小体の計数検査を始めた。検査・保険態勢が確立されていない国内では珍しい取り組みだ。 同病院は1年前に石綿中皮腫相談窓口を開設し、4月からは最先端の技術を持つ胸部外科医の着任で手術件数が大幅に増加。今後も呼吸器疾患の基幹医療施設としての機能を、より高めることにしている。

アスベストを肺に吸い込むと、組織に突き刺さるなどして、30-40年後に肺がんや悪性中皮腫を発症するといわれている。同小体は、アスベストの周囲にタンパク質や鉄分が付着して形成される棒状・ビーズ状の物体。摘出した肺の一部を化学処理して光学顕微鏡で見ると、存在が確認できる。

国内の労災補償や健康被害救済制度では、一定重量当たりの小体数が認定の重要なポイントだが、高い計数技術が求められることに加え、医療保険の対象外のため、実施する医療機関は少ない。

同病院では、世界トップレベルの技術を持つ米国のハーバード大などと連携して、専門スタッフがトレーニングを積み重ねてきた。

計数検査は、同病院で治療を受けた希望者なら無料で実施。院外患者も有料で調べてもらえる。問い合わせ・相談は、同病院(電話58-2300)で受け付けている。

胸部外科手術の件数は、呼吸器外科医長に岡部和倫医師(46)が着任した4月以降さらに増加。岡部医長は研修先の米国でも医師資格を取り、2004年まで世界的権威の下で高度な技術を学びながら、国内医師の10倍超のペースで施術してきた。県内で唯一、日本呼吸器外科学会、日本肺がん学会双方の評議員を務めている。
▲ 計数検査をするスタッフ(山陽病院)と、 確認されたアスベスト小体▲ 計数検査をするスタッフ(山陽病院)と、 確認されたアスベスト小体
▲ 計数検査をするスタッフ(山陽病院)と、確認されたアスベスト小体
「呼吸器疾患治療に全力」
 岡部医長は「山陽病院では6月に、国内でトップクラスの症例数である27件の呼吸器外科全身麻酔手術を行った。今後も3人の呼吸器外科専門医が、一層の技術研さんに励みながら、肺がんや中皮腫など呼吸器疾患の治療に努力したい」と話している。

宇部日報社 平成18年8月4日(金)掲載記事