手掌多汗症手術外来
「手掌多汗症」に対する 胸腔鏡下胸部交感神経遮断術について
手のひらに大量に汗をかくために、握手ができない、試験用紙などの重要書類が濡れて困る、スマートフォンやキーボードの操作に困る、などで悩んでいる人は、割合にすると約5%おられると考えられています。このような症状を「手掌多汗症」といい、自律神経のひとつである交感神経が過度に緊張することが原因と考えられています。
* 外来受診の際の注意点 ・ 他の医療機関からの紹介状が必要となります。 ・ 手術は薬物療法無効例のみが対象となります。 ・ 当院では手術のみ対応しており、薬物療法には対応しておりません。 |
治療の概略
治療法としては、皮膚科における外用薬治療:塩化アルミニウム軟膏、オキシブチニン塩酸塩(ローション)やイオントフォレーシス(電気治療)が推奨されます。しかし、効果が不十分であったり、皮膚障害(表皮が剥がれる、水泡ができる、など)の副作用により治療を継続できないこともあります。このような場合、手術:胸腔鏡下胸部交感神経遮断術も選択肢となりえます。
手術の効果について
当院ではこれまで70人以上の患者さんに「胸腔鏡下胸部交感神経遮断術」を行っております。図1でお示ししますように、およそ83%の患者さんで満足いく効果:手の汗を減らすことができ、「積極的な行動がとれるようになった」、「仕事の能率が上がるようになった」等、喜んでいただき、期待どおりではないものの一定の効果を実感できた方も含めると、93.3%の患者さんで効果を確認できました。一方、手術をしても効果を実感できなかった患者さんが6.6%おられました。手術をしても、効果がない場合もあることを御了承ください。

手術の後遺症について
手術の後遺症として「代償性発汗」というものがあります。これは、手術後に背中、足底、臀部、大腿などの発汗が増える現象であり、術後に発症する割合はほぼ100%とされます。発症した場合の有効な治療法はありません。よって、手の症状の改善の有無にかかわらず、代償性発汗により、手術前よりも手術後に、苦痛が大きくなることもあります。手術を検討されるにあたっては、自分は本当に手の汗が多くて日常生活にも支障があるのか、そして、代償性発汗を受け入れられるのか、よく考えてから決めて下さい。当院における術後代償性発汗発生部位については、図2で示しますように、背部、足底、臀部に多い結果でした。背部から下半身とされますが、頭部や顔面に発症することもあります。一方、腋の汗は手掌同様に汗が減る効果が得られることもあります。

手術の方法:胸腔鏡下胸部交感神経遮断術
腋の下あたりに1~2cmの小さい傷を1つあけ、ここから内視鏡(胸腔鏡)、電気メスなどを挿入し、交感神経の一部を切除あるいは焼却のうえで離断し、交感神経の刺激を遮断します。通常、傷は吸収糸(溶ける糸)による埋没縫合で閉創するため、手術後は抜糸の必要がなく、傷跡はあまり目立ちません。手術は片側のみの場合20分前後、両側の場合は片側の手術を終えた後に体の向きを変え消毒を追加したうえで、対側の手術を開始するため、60分前後かかります。両側手術の場合、左右に一つずつ傷ができることになります。
手術の概略
病 名 | 手掌多汗症 |
手術名 | 胸腔鏡下胸部交感神経遮断術 (希望に応じて片側のみと両側のいずれも対応しています) |
手術時間 | 片側:約20分、両側:約60分 |
麻 酔 | 全身麻酔 |
手術内容 | 胸の中にある交感神経という手掌多汗症状の原因となっている神経を、内視鏡で見ながら遮断する手術です。腋のあたりに約1-2cmの傷ができます。 |
効果と後遺症 | 効果:手の発汗は90-95%で症状の改善が期待できます (汗が完全に消失するわけではありません)。 後遺症:腰背部、臀部、足底などに汗をかきやすくなる代償性発汗は、軽度~中等度が60-80%、重度(患者さんが日常生活で強い苦痛を感じるレベル)は5-10%とされます。 |
入院期間 | 2泊3日(手術前日入院、手術翌日退院)の見込みです。 |
費 用 | 保険適応あり:3割負担の場合、約13万円 |
予想される手術合併症
この手術では、次のような合併症が考えられます。
薬物アレルギー、出血、肺損傷、傷の拡大(大きくする、数を増やす)など。
薬物アレルギー、出血、肺損傷、傷の拡大(大きくする、数を増やす)など。
術後の経過
手術当日
手術終了直後は全身麻酔の影響で眠気があります。意識がはっきりするまでに長い場合2時間程度かかります。麻酔がしっかりさめるまで、飲食や歩行はできません。
手術後は腋の下の傷、交感神経を遮断した背中に痛みを感じますが、徐々に改善します。痛みが強い場合は鎮痛剤を使いますので、看護師に申し出てください。
帰室から2時間後に、飲水や歩行が可能かどうか確認します。問題なければ、以後は絶飲食や歩行制限は解除となります。順調に経過した場合、酸素投与や点滴も手術当日中に終了します。
翌日
創部の診察、血液検査、胸部レントゲン検査を行います。これらの検査結果に大きな問題がなければ、退院できます。合併症などの問題があれば、退院は延期となります。退院時には数日分の鎮痛剤を処方させていただきます。
退院後
退院から1-2週間後に外来受診が必要です(創の診察ならびに治療効果と代償性発汗確認のため)。
手術終了直後は全身麻酔の影響で眠気があります。意識がはっきりするまでに長い場合2時間程度かかります。麻酔がしっかりさめるまで、飲食や歩行はできません。
手術後は腋の下の傷、交感神経を遮断した背中に痛みを感じますが、徐々に改善します。痛みが強い場合は鎮痛剤を使いますので、看護師に申し出てください。
帰室から2時間後に、飲水や歩行が可能かどうか確認します。問題なければ、以後は絶飲食や歩行制限は解除となります。順調に経過した場合、酸素投与や点滴も手術当日中に終了します。
翌日
創部の診察、血液検査、胸部レントゲン検査を行います。これらの検査結果に大きな問題がなければ、退院できます。合併症などの問題があれば、退院は延期となります。退院時には数日分の鎮痛剤を処方させていただきます。
退院後
退院から1-2週間後に外来受診が必要です(創の診察ならびに治療効果と代償性発汗確認のため)。