呼吸器外科このページを印刷する - 呼吸器外科

診療科紹介 呼吸器外科

当科の特色

 当院呼吸器外科は肺・縦隔の良性・悪性腫瘍、転移性肺腫瘍、胸膜中皮腫の手術、感染性肺疾患の手術療法、自然気胸、膿胸などの良性疾患の手術療法を行っています。手掌多汗症に対する胸腔鏡下交感神経焼灼術も対象を選んで行っています。低侵襲手術を積極的に取り入れており、肺癌に対する手術の約9割を傷が3ヵ所の胸腔鏡下手術で行っています。最近は傷が1ヵ所のみの単孔式手術を採用する症例も増えています。
 肺癌の手術に関しては、進行癌で腫瘍が大きく胸壁へ浸潤している場合や明らかなリンパ節転移を伴う症例など、術前に抗がん剤治療や放射線治療を行ってから後に行う手術では開胸手術を選択する場合もあります。適応があれば気管支形成や血管形成を伴う手術や他臓器合併切除を伴う拡大手術も行っています。当院で治療実績の多い、胸膜中皮腫に対する手術も診断目的の生検から根治を目指した胸膜外肺全摘まで幅広く行っています。術後の治療は放射線科、腫瘍内科と連携し放射線治療や抗がん剤による術後補助化学療法を行っています。
 呼吸器外科領域では鏡視下手術の技術認定制度の整備が他領域より遅れていましたが、
学会主導のもと2021年より胸腔鏡安全技術認定制度が発足しました。書類選考と動画の審査を経て、初年度の認定医が選出されましたが当院にも資格取得者が在籍しております。
手術を安全、確実に遂行するために各自、研鑽を積み重ねています。
当科の特色

より低侵襲な「単孔式」胸腔鏡下手術を導入しています

 当院は山口県から「特定領域がん診療連携推進病院(肺がん)」の指定を受け、肺がん診療の質の向上に努めています。また気胸や膿胸、縦隔腫瘍などの様々な呼吸器・胸部疾患に対する専門的診療を担っています。
 これら疾患の外科治療は呼吸器外科が担当しています。当院は呼吸器外科基幹施設として認定されており、呼吸器外科専門医3名と麻酔科医や看護スタッフとのチーム医療によって、高度で安全な手術が提供可能となっています。さらに術前・術後管理や機能回復に向けてのリハビリなど、呼吸器専門医療機関として万全の態勢で臨んでおります。



 
 肺がんや気胸などに対する手術を行うためには、肋骨や横隔膜に囲まれた「胸腔」という肺が存在しているスペースに到達しなければなりません。そのため、側胸部に手術創を設けて、肋骨と肋骨の狭い間から手術を行います。かつては大きな傷を伴う「開胸手術」が主流でしたが、近年は胸腔鏡というカメラを用いることで小さな傷で手術を行う「胸腔鏡下手術」が一般的になっています。
 胸腔鏡下手術は、胸腔内を観察するためのカメラや、肺などの組織を切離・縫合したりする器具を、数cmの小さな穴(孔)から胸腔内に入れ、これらを体外で操作して行う手術です。傷が小さくて済むことから近年は多くの施設で行われており、当院でも十数年以上前から導入を開始し、十分な症例経験を蓄積して参りました。
 この傷(孔)を数ヶ所設けて行う(多孔式)胸腔鏡下手術がこれまで一般的でありましたが、2021年から当院では3~4cmの創部1つのみで行う「単孔式胸腔鏡下手術」を導入しました。従来の方法と比べて傷が1ヶ所となりますので,痛みやダメージが当然少なくなり、術後の回復も早い印象です。
 単孔式手術では、一つの狭い傷から多数の道具を挿入して手術をしますので、専用の手術器具や高度な技術が必要となります。そのため全国的にも導入されている施設はまだ少ないのですが、当院はこの高度低侵襲手術をいち早く導入した施設の一つとなっています。
 導入当初は肺部分切除術といった比較的複雑でない手術のみを対象にしていましたが、現在は肺がんの標準術式である肺葉切除・リンパ節郭清術や、自然気胸や膿胸といった一般呼吸器外科手術にも適応を拡げています。ただし、すべての患者様に提供できるわけではなく、患者様の病状(肺がんの進行度など),併存疾患の有無や病歴によっては導入が難しい場合もあります。あくまでも手術を安全に、また確実に完遂できることを目指した上で、この単孔式手術を選択しています。

 当院呼吸器外科では、病気をしっかり治すことは当然として、さらにカラダに優しく、生活の質を維持できることも目指した手術治療を提供して参ります。単孔式胸腔鏡下手術についてのご希望、ご不明な点がございましたら、当院呼吸器外科まで是非お気軽にご相談下さい。




転移性肺腫瘍

 肺以外の癌が肺へ転移を起こした場合に、肺の転移巣を切除することで良好な治療効果が期待できる場合があります(大腸癌などは肺転移の切除で予後を改善することが知られています)。多くは肺の辺縁に転移を起こすため、肺を部分的に(くさび形に)切除することで治癒が得られますが、転移する部位や転移巣の大きさによっては部分切除術が困難な場合もあります。無理な切除は腫瘍からの十分な距離が確保されず、再発の危険性が増加します。部分切除術が困難な場合はできるだけ正常肺を温存する目的で区域切除術が行われ、それでも困難な場合は肺葉切除術が行われています。

 このように、転移性肺腫瘍においても、腫瘍の部位や大きさで手術術式が異なります。また区域切除術は煩雑な手技を要するため呼吸器外科専門施設での手術が望まれます。したがって、転移性肺腫瘍と診断された場合は、手術の適応や手術方法決定のために呼吸器外科専門医の診断をお受けになることをお勧めします。

 当院では、部分切除術が困難な場合は積極的に区域切除術を行っており、ほとんどの場合はこれらの手術を患者様の負担の少ない胸腔鏡下手術で行っています。

 

縦隔腫瘍

 縦隔腫瘍に対しても、積極的に胸腔鏡手術を導入しています。胸腔鏡手術のメリットは、胸骨を切離する必要がないため術後の胸骨骨髄炎などの危険性がなく、また術後放射線治療が必要な患者様にも胸骨の治癒を待つ必要がないため、迅速に治療を開始することができます。美容的にも優れており、胸骨を切って行う従来の手術を行うと首から前胸部にかけての縦切開の傷が問題となっていましたが、胸腔鏡手術は側胸部に傷が入るので傷が目立ちにくく、とくに若年者や女性にも受け入れやすい手術です。縦隔腫瘍に対する胸腔鏡手術の安全性や治療効果は、従来の手術と比較しても遜色ありません。

気管・気管支ステント留置術

 当科では、腫瘍などによる気管・気管支狭窄に対し、レーザー焼灼術やステント留置術を積極的に行っています。また、必要に応じて硬性鏡を用いたステント留置を行っています。