統括診療部長 岡部和倫このページを印刷する - 統括診療部長 岡部和倫

私は、大分医科大学(現大分大学医学部)で学び、1985年に日本の医師免許を得ました。その後、岡山大学附属病院呼吸器外科で、長年にわたり教官として研鑽を積むとともに、アメリカ医師試験にも合格し、ボストンのBrigham and Women’s Hospitalの胸部外科で最先端の診療を経験してきました。同病院は、ハーバード大学の主要教育病院で、Massachusetts General Hospital (MGH)とパートナーです。教授のSugarbaker先生は、肺癌や悪性胸膜中皮腫の治療で有名で、患者は全米のみならず、時にはヨーロッパからも受診しています。呼吸器と食道疾患を合わせて、全身麻酔手術症例が1年間に2300例ほど有り、私を含めた5人のclinical fellowで分担しました。日本で経験できる年間平均症例数の約10倍以上だと思います。
アメリカ医師または看護師試験に合格し、米国で多くの貴重な経験をしたいという医師、看護師、医学生や看護学生が増加していますので、私のアメリカ医師試験のための試験対策や経験を簡単に記します。私の場合は五里霧中、試行錯誤、七転び八起きのすえに、自分に適した勉強方法を見つけることができ、それからは比較的順調でした。私の知人の内科医は、研究での留学経験がないにもかかわらず、アメリカ医師試験に合格しました。適切な試験対策を行えば、学生でも留学経験がなくても、合格は十分に可能です。

アメリカ医師臨床留学のための資格であるECFMG CERTIFICATION (ECFMG: Educational Commission for Foreign Medical Graduates, www.ecfmg.org)を得るためには、USMLE (United States Medical Licensing Examination, www.usmle.org) Step 1とStep 2、TOEFL (Test of English as a Foreign Language)、CSA (Clinical Skills Assessment)の合格が必要でした。USMLE Step 1とStep 2は、アメリカの医学生が受験する試験と同一で、日本でも受験可能です。試験対策の最大のポイントは、「各科の基礎知識をまず日本語の参考書などで整理し、次に英語の試験対策本や問題集を用いて勉強する。」とういう勉強方法でした。
Step 2は、Preventive Medicine、Psychiatry、Pediatrics、Obsterics and Gynecology、Internal Medicine、Surgeryなどについての臨床医学の試験です。1999年12月に、フィラデルフィアで受験しました。試験時間は45分の休憩を含む9時間で、コンピューターを利用して、400問出題されました。Advanced Life Support for the USMLE Step 2やFIRST AID FOR THE USMLE Step 2といった試験対策本およびREVIEW FOR USMLE Step 2という問題集を中心に勉強しました。

Step 1は、Anatomy、Behavioral Sciences、Biochemistry、Microbiology、Pathology、Pharmacology、Physiology、Nutrition、Genetics、Agingなどについての基礎医学の試験です。2000年5月に、ボストンで受験しました。試験時間は45分の休憩を含む8時間で、コンピューターを用いて、350問出題されました。試験対策本としてはCrashing the Boards: USMLE Step 1やFIRST AID FOR THE USMLE Step 1を、問題集としてはREVIEW FOR USMLE Step 1を利用しました。 

CSAは、10人の模擬患者を診察させ、診察中の態度、英会話、問診、診察手技、患者への説明、カルテ記載などについて評価する試験です。1人の模擬患者に約30分の試験時間でした。試験対策としては、KAPLAN(米国大手予備校、www.kaplan.com)のCSA Extended Prep 5-Day Training Program(ニュージャージー州にて)が素晴らしかったです。KAPLANは、日本にも有ります。講義と実技指導と模擬試験で、CSAの受験対策を十分に授けてくれました。KAPLANのCSA Programに参加していなかったら、私はCSAに合格できなかったと思います。2000年9月に、フィラデルフィアで受験しました。2001年2月に待望のECFMG CERTIFICATION(写真)が届きましたが、この時点で私は40歳でした。マサチューセッツ州医師免許(写真)を取得し、2002年4月からアメリカでclinical fellowを始めました。

合計6年間以上のアメリカでの生活は、公私ともに極めて有意義でした。この拙文が、アメリカの医療を志される医師、看護師、医学生、看護学生などの医療関係者の目にとまり、少しでもお役に立てばと祈っています。適切な試験対策を行えば、学生でも、留学経験がなくても、40歳でも合格は十分に可能です。患者の皆様におかれましては、アメリカでの医師経験を有する呼吸器外科医も診療している国立病院機構山口宇部医療センターを安心して受診されますよう、よろしくお願い申し上げます。