稀少肺疾患・肺胞蛋白症このページを印刷する - 稀少肺疾患・肺胞蛋白症

稀少肺疾患・肺胞蛋白症

原因不明の稀な呼吸器疾患の一つである特発性肺胞蛋白症(idiopathic pulmonary alveolarproteinosis:IPAP)に関しての情報として、従来の肺洗浄療法の代わりにGM-CSF吸入療法の治験が進行中である。

国立国際医療センター研究所の呼吸器疾患研究部の中田光氏を班長とする厚生労働科学研究;基礎研究成果の臨床応用推進事業の研究課題「GM-CSF吸入による重症特発性肺胞蛋白症の治療研究」(平成15年2月1日~平成17年2月28日)に基づき、重症例(酸素分圧<70torr室内気)には本疾患に対する画期的な治療法として期待されるGM-CSF吸入療法の臨床治験の選択肢がある。

IPAPは肺胞および終末細気管支に過剰なサーファクタント蛋白及び脂質の貯留が起こり進行性の呼吸困難を呈する稀な疾患で、本邦の罹患率は不明であるが、欧米の報告では人口10万対0.3とされ、好発年齢は30~50歳代で男女比は約3:1である。本疾患の病因はGM-CSFのシグナル伝達障害により、肺胞マクロファージのサーファクタント処理能が低下することによるものと考えられている。

GM-CSFやその受容体のノックアウトマウスがPAPと類似の病態をきたすことやGM-CSFの受容体を欠く先天性のPAPの存在が報告され、また中田らはIPAP患者の肺胞洗浄液および血清中にGM-CSF中和自己抗体を発見し、その抗体は疾患特異性が極めて高く、さらにGM-CSF大量皮下投与による改善例で自己抗体価が低下することを確認している。本邦でのIPAP症例においてGM-CSF吸入療法の有効性がすでに明らかになりつつあり、本疾患の治療の革新と考える。

治験参入について

IPAPの重症例に対するGM-CSF吸入療法の臨床試験の実施計画書による。
対象:安静時室内気でPO2<70torr、16~80歳
GM-CSF(Leukine:yeast細胞由来の組換え型ヒトGM-CSF、250μg/vial)を12週間の無治療観察期間の後125μg/日を6週間吸入、効果判定の後、有効例は引き続き125μgを無効例では250μgに増量してさらに6週間吸入療法を行う。
プライマリーエンドポイント:動脈血液ガス分析にてA-aDO2≧20改善が著効。≧10が有効。他、HRCT,肺機能、血清マーカー、BAL,6分間歩行試験、QOLアンケートで評価。
(主任研究者は新潟大学医学部生命科学医療センター長 中田光教授)